超かけにくいボタン

授業のレポートでThe White Stripesの MV の The Hardest Button to Buttonについて調べたので、ついでにブログにも載せてみます。

はじめに

少しでも映像に興味のある人ならば、一度は聞いたことあるだろう、映像作家のミシェルゴンドリーの作品が僕は大好きです。そもそものきっかけが、高校生の時にTheWhiteStripesというバンドを気に入ってそのPVをYoutubeで見たのが、ミシェルゴンドリー作品に触れた最初でした。今まで、ハリウッド映画のVFXのようなハイテクな映像ばかりを嗜好していた僕にとって、視覚トリックを見せられているような、あの感覚に衝撃を受けた。それからは、ミシェルゴンドリーの映像作品を探し、作品を見、どの作品にも込められている芸術性に引き込まれていったことをよく覚えています。

作家紹介

ミシェルゴンドリーは、フランスの映像作家で、長編の映画やアーティストのミュージックビデオ、CMなど、活動は多岐にわたりますが、そのどの作品にも共通するのは、シンプルなアイデアと、それを見事に表現する映像マジックです。そのアイデアのキャッチーさと、視覚トリックばりの映像マジックは、初めてその映像を見る人でも引き込まれ、記憶に残るものだと思います。今回題材に取り上げたThe White Stripes “The Hardest Button to Button”はミュージック界でもかなり有名な方の作品ではないかと思います。(もしくは、Chemical BrothersのStar Guitarがよく取り上げられる気がします)映像の授業でもたびたび紹介された記憶がありますし、おそらくこの文化分析批評入門でも取り上げられてもおかしくない作品だろうと思っています。

反復表現について

このミュージックビデオの主な特徴としては、増殖する要素と、黙々と繰り返される反復表現でしょう。映像表現として反復表現を用いている作品は多く、古くはズビク・リプチンスキー(Zbig Rybczynski)が70年代にデジタル技術を使った反復表現をミュージックビデオ[1]で試みています。音の反復性の点から見ると、日本人ならお馴染みの佐藤雅彦の手がけた初期のTVCM[2]に類似点を見出すことができます。リズムに乗って復唱される商品名はTVを見ている消費者の耳に刷り込みのように残ったものだと思われます。この作品の素晴らしいところは、反復し増殖される要素が、すべて大量に用意された実物である点だと思います。この作品が作られた年(2006年)のデジタル技術では、複製と合成なんて簡単にできるでしょう。しかし、それを避けてあえて実物を増やすことによって、デジタル表現に慣れてしまった現代の人々の目を欺いているのです。「コレはCGか?」「いや、違う」といったような会話が想像できるように、特殊な表現は大体CGであるという先入観を欺いて視覚的にも感覚的にも視聴者を困惑させられるような仕組みになっているのです。

ストップモーションアニメーションとの差異について

僕は映像が専門ではないので、細かい定義の話は出来ないのですが、この作品はストップモーション・アニメーションとはまた違ったものであると思います。コマ撮りという手法を使う点では一致していますが、1コマ1コマが、短い映像の切り貼りで表現されており、従来のコマ撮り映像とは一風変わった手法で撮影されています。人間をストップモーションで撮影する事をピクシレーション[3]と呼ぶのですが、この動画のように映像を細かく切り刻んでつなぎ合わせる手法は残念ながら調べられませんでした。こういった手法は、果たして以前からあったのか?あったとしたら、誰が先駆者でどのような文脈で生まれたのかを是非授業の題材で取り上げて欲しいと思っています。

パロディ

この作品は、その映像表現のおもしろさと、バンドの成功も相まって沢山のパロディが制作されています。その中でも最も有名なものはThe Simpsonsのパロディ[4]でしょう。制作された経緯は詳しくは知らないのですが、ミュージックビデオにカメオ出演しているアメリカのアーティストのBeckが本人に変わって声出演という話もあります。その他にもYoutubeには沢山のファンの二次創作[5]が制作されています。こういったファンの二次創作が頻繁にされることが、撮影方法もアイデアもシンプルなのに面白い、という事実を表しているのです。

アナログな質感へのこだわり

ミシェル・ゴンドリーの作品は、一貫してローファイな映像をとおしてアナログな質感を表現しています。そのこだわりは自らの映像作品集のメイキング映像[6]でも徹底されています。2000年代に撮影された作品にもかかわらず、60年代に撮影されたかのようなローファイで味のある映像を撮影しています。他の作品にも見られるミシェル・ゴンドリーのローファイな質感へのこだわりは、自らの映像のアイデアの地震の裏返しとも取れます。

まとめ

ミシェル・ゴンドリーがTheWhiteStripesのミュージックビデオを制作したのは、この作品を含めて三作目あるのですが、そのどの作品も素晴らしいアイデアとアナログへのこだわりがあります。映像を見る人を視覚と先入観のトリックに陥れるそのスキルと感性は今後も多くの人を魅了していくでしょう。

参考URL

  1. http://www.youtube.com/watch?v=tytPcvyJASc
  2. http://www.youtube.com/watch?v=nNmSHVGiZ80
  3. http://en.wikipedia.org/wiki/Pixilation
  4. http://www.youtube.com/watch?v=RTIy6HaF5Lk
  5. パロディ
    1. http://www.youtube.com/watch?v=dS68VcME9wk
    2. http://www.youtube.com/watch?v=hwJnSRvQDzY
    3. http://www.youtube.com/watch?v=dS68VcME9wk
  6. http://www.youtube.com/watch?v=fOnBEl0x75A

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