BjorkとSquarepusher

音楽サークルでやって来たこと
軽音楽サークルに入っていてその集大成としてBjorkをやりました。
一年の締めくくりとしてまとめます。

ロックサークルと自分

現状のギターロックの氾濫

巷の軽音楽サークルでは、ギターロックがあふれ主に邦楽を中心に古今東西さまざまなロックが演奏さています。当たり前のようにMarshallとJazzChorusの音作りについての話題が繰り返され、最近のアーティストの音楽はほぼやり尽くされて、隙間産業を探してはそれに打ち込む時代性がそこにはありました。

しかし、個人的にはそれを揶揄しているわけではなく、この時代にあって極めてその状態は健全な状態であり、そういう状況だからこそ、変わったことをやると映えると思っています。所謂ロキノン系バンドも好んで聞くし、そういったサークル様子に特に不満を覚えることはないのですが、むしろ、そういった状態にあるからこそ自分の中で誰も見たことがない世界を提示してみたいという欲求が生まれたのだと思います。

ロックミュージックの拡張

ロックミュージックと打ち込み音楽の融合を商業的に成功させたRadioheadの存在は無視できないと思います。90年代のオルタナティブ・ミュージックの一界隈として、Radioheadはその地位を確立し、商業的成功と歴史的に重要な役割を果たしました。

それ以降は、パーソナルコンピュータが一般層にも普及し、パソコンで音を編集するのが当たり前の時代になってゆき、00年代のオールドロックの再復興の流れへとつながってゆきます。HIPHOPのようなビートミュージックとロックの融合や、ディスコ・ファンクの流れなどと融合したDaftPunkなどのロックの風味を取り入れたユニットがロックキッズの耳へと入っていくのです。Radioheadがすべての始まりとは言いたくは無いのですが、その功績は無視できないほど大きいのです。

エレクトロミュージックとポップの融合の歴史

それこそ、Bjorkがポップスとエレクトロの時代を切り開いてきた張本人であると。90年台のDTMもそれほど普及していなかった時代に、その偉業を成し遂げたことは大きいのではないでしょうか。テクノ・ミュージックから見ても、Bjorkの楽曲に含まれるイノベイティブな要素は無視できない斬新さであるとおもいます。

日本では、YMOがテクノをバンド・サウンドで演奏しポップへと消化させました。現代の所謂Perfume的なテクノポップの流行は、YMOの実験的な挑戦が布石となっています。

Squarepusher

テクノミュージックとバンド・サウンドの融合を目論み、夏にSquarepusherをバンドで演奏しました。テクノ・ミュージックとしてのドラムンベースを取り入れたロックバンドとして選曲を行い、バンド形式にこだわり人間のビートでテクノを演奏する試みに挑戦しました。

Squarepusherは90年台〜活躍しているアーティストで、ドラムンベースのビートにベースを乗せて曲を演奏するアーティストです。Jazz・Fusionの理解があり、初期の曲はコード進行が複雑な曲も少なくありませんでした。また、ドラムンベースを昇華させ更に複雑なリズムにし、その曲調はドリルンベースとも呼ばれていました。ドラムンベースのドラムフレーズは人間が叩くのが不可能なものも少なくありません。

3ピースで再現できて、なおかつ曲として成立するクオリティにするには、それ用の選曲をしなければいけませんでした。細かいところの工夫などは割愛しますが、テクノのような無機質なものにバンドサウンドを取り入れるのはなかなか大変でした。Squarepusherが生演奏のサンプリングを多用しているため、まだやりやすい方であったと思います。ドラムにとてもうまい子がいたのでライブとして成立しました。

「Squarepusherコピーする人がいるんだ。」とか思われたいがためにやったのが本音だったりします。

Bjork

電子音楽のバンド・アンサンブル

Bjorkの楽曲は、一部の民族楽器を除いてほとんどが電子楽器によるサウンドであり、生演奏で演奏するためには、かならず電子楽器を上手く操るメンバーが必要不可欠でした。Bjorkのライブ映像を見ると、ギターや生ドラムを演奏している人はおらず、ストリングスやハープなどの生楽器をメインとして演奏しています。エレクトロのビートの上に、ストリングスやコーラスが乗っかることにより、アンビエントかつポップなサウンドを実現しているのです。このこと自体は決して珍しいことではないですが、オルゴールを使った生楽器の自動演奏を取り入れていたり、電子音を人のグルーヴで出す工夫をしていたりと、両者のクロスオーバーを高レベルで実現しようとしているところにこだわりを感じました。あっぱれ。

人間のグルーヴ

Bjorkをバンドでコピーする上でこだわりたかったところは、普通は打ち込みの部分を一旦人のグルーヴを介して表現することです。クラブで流すわけではなく楽器演奏会としてのライブなので、打ち込みを流しただけで、はいライブでしたとは言いたくありませんでした。

バンドの背骨であるシンセベースは基本的に打ち込みやMidiOutを用いたほかは、演奏が難しいパート以外はすべて生演奏をするようにパート分けを行いました。そうすることにより、打ち込みを流すだけと思われているテクノ・ミュージックをバンドとしてのライブとして昇華させました。

ドラム・トリガー

バンド演奏で重要となってくるリズムパートですが、テクノミュージックではあまりドラムは演奏されません。しかし、Bjorkの演奏にはテクノ・ミュージックというよりポップ・ミュージックであるため、人のグルーヴを介した電子音のビートが必要不可欠でした。また、ドラムの生演奏では出せない音があります。そもそも、生ドラムセットではどんなに工夫しようとも出せる音色には限りがあります。その壁を超えるために、「ドラムトリガー」を作りそれをライブに取り入れました。

ドラムトリガーとは、振動センサーをドラムセットに取り付け、叩くとその振動を検知し予め用意していた音が鳴るというものです。これにより、生ドラムのビートで電子音を鳴らすことに成功しました。電子ドラムを買うよりは断然安上がりです。

DTM

Bjorkの音をライブで再現するためには、一旦すべてのパートを耳コピして聞き分けることが必要不可欠でした。というのも、生演奏では再現できないフレーズや音を見極める必要があったからです。そのため、ライブで演奏する5曲すべてのパートを耳コピして打ち込みました。音色も出来る限り再現し、原曲と遜色無いレベルまで打ち込みの完成度を高めました。

MIDIとアナログシンセ

ふとしたきっかけで、アナログシンセのJuno-106を拾い、それをライブで使用しました。アナログシンセ特有のツマミに最初は戸惑いましたが、色々と弄っているうちに感覚がつかめてきました。最終的に、MIDIインターフェースでPCとつなぎ、自動演奏できるようにしました。矩形波・ノコギリ波による太い音はベース音をメインにして使いました。

まとめ

ギターロックが氾濫する巷の軽音楽部でエレクトロミュージックをバンドで演奏することは一筋縄では行きませんでした。自分もDTM初心者なりに試行錯誤して、自分なりの答えへと近づけてゆきました。世の中にエレクトロミュージックを作って配信している人は星の数ほどいますが、それをロック・バンドとして演奏しようとするアーティストはなかなかいないでしょう。それも、エレクトロミュージックを作る際はライブ演奏のことはあまり考えておらず、曲の完成度を高めるためには、ライブで再現不可能な様々なエフェクトを取り入れなければいけません。

しかし、クラブ・ミュージックの世界ではその限りではありません。DJセットで掛けられるエフェクトを楽曲に反映させることは少なくありません。むしろ大多数です。演奏楽器とは違った独自の進化を遂げたDJセットという”楽器”に今後は注目してみたい自分がいます。

エレクトロミュージックとポップスの融合の結晶を、バンドで演奏してみるという実験をしてみた感想ですが。詰めが甘い点を除いて、概ね今の自分の出来る範囲を超えられたかなと思っています。暇な時間を無駄に使いDTMとのにらめっこをしてきたおかげかもしれません。そんな壮大なお遊びに付き合ってくれた友人と後輩に感謝したいと思います。

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